早期経営改善計画_ビジネスモデル俯瞰図の作成方法

建設業を営む経営者の皆様にとって、日々の現場管理や資金繰りの調整は非常に骨の折れる作業です。特に近年、売上の減少や先行きの不透明さを感じている場合、「どこをどう改善すればいいのか」という出口の見えない不安を抱えることも少なくありません。こうした状況を打破し、自社の本源的な収益力を向上させるための第一歩として国が推奨しているのが、「ビジネスモデル俯瞰図」の作成を含む「早期経営改善計画策定支援事業(バリューアップ支援事業)」です。

この事業では、中小企業診断士などの専門家(認定経営革新等支援機関)の力を借りて、自社の経営状況を客観的に分析し、将来に向けた具体的な改善策を練り上げます。その中核となる「ビジネスモデル俯瞰図」は、自社が誰に対してどのような価値を提供し、どのようにお金が回っているのかを「見える化」するための非常に重要な書類です。

本記事では、提供された資料に基づき、建設業の経営者が専門家と共にどのようにビジネスモデル俯瞰図を作成し、現状分析を行って自社の強みを見つけ出していくべきなのか、その具体的なプロセスと重要性について徹底的に解説します。この制度を正しく理解し、活用することで、銀行との良好な対話を実現し、持続可能な経営体制を築くための指針を手にしてください。


目次

1. ビジネスモデル俯瞰図は自社の経営状況を客観的に把握し収益力向上の土台を作るために不可欠な書類である

早期経営改善計画を策定するプロセスにおいて、最も重要かつ基本となるステップの一つが「ビジネスモデル俯瞰図」の作成です。これは、事業の全体像を一枚の図にまとめ、自社のビジネスがどのように成り立っているのかを構造的に理解するためのツールです。建設業においては、単に「工事を受注して施工する」という表面的な流れだけでなく、どのような顧客から依頼を受け、どのような協力会社と連携し、どこで利益を生み出しているのかという「商流の分析」が欠かせません。

本事業の目的は、資金繰りの不安定さや売上減少といった課題を抱え始めた事業者が、早期に経営改善に取り組むことにあります。そのためには、まず自分たちの「現在地」を正しく知る必要があります。ビジネスモデル俯瞰図を通じて現状を客観的に把握することは、経営危機の回避や本源的な収益力の向上を目指す上での絶対的な土台となります。

専門家である認定支援機関は、この俯瞰図を作成する過程で経営者と対話を重ね、目に見えにくい経営課題を浮き彫りにしていきます。自分たちだけでは当たり前だと思っていた自社の強みや、逆に見過ごしていた弱みが、図式化することではっきりと見えるようになります。この「見える化」こそが、改善策であるアクションプランを策定するための最も重要な出発点なのです。

2. 認定支援機関である専門家の支援を受けることで自社の真の強みと弱みを第三者の視点から特定できる

早期経営改善計画策定支援事業の大きな特徴は、中小企業、小規模事業者、個人事業主などが、認定経営革新等支援機関(税理士や中小企業診断士など)のサポートを受けて計画を策定するという点にあります。建設業の経営者は現場のプロフェッショナルですが、自社の経営を財務的な側面や市場の文脈から客観的に分析する機会は限られているかもしれません。

専門家は、財務データや事業の実態を詳細に調査し、自社の「本源的な収益力」がどこにあるのかを分析します。ビジネスモデル俯瞰図を作成する際には、単なる作業フローを書くだけでなく、「なぜ自社が選ばれているのか」という強みの分析や、「どこにコストの無駄があるのか」という課題の明確化を行います。

この専門家による客観的なアドバイスがあるからこそ、経営者の主観に頼らない、実効性の高い経営改善計画が作成可能になります。資料に明記されている通り、基本的な経営改善に取り組む意欲がある事業者にとって、専門家の視点を取り入れることは、自社を客観的に見つめ直し、新たな成長のきっかけを掴むための極めて有効な手段となります。

3. ローカルベンチマークや経営デザインシート等の推奨ツールを活用して現状の「見える化」を徹底する

早期経営改善計画の策定において、現状を「見える化」するために推奨されているのが、「ローカルベンチマーク(ロカベン)」や「経営デザインシート」といったツールの活用です。これらは、ビジネスモデル俯瞰図をより具体的かつ多角的に補完する役割を果たします。

ローカルベンチマークは、企業の財務情報だけでなく、経営者の意欲や従業員のスキル、取引先との関係性といった非財務情報を整理するためのツールです。建設業であれば、長年築いてきた地域での信頼や、特定の工法における高い技術力などが、どのように収益に結びついているかを数値と定性の両面から確認できます。

また、経営デザインシートは、将来の理想の姿から逆算して、今何をすべきかを整理するために役立ちます。これらのツールを用いて自社の現状を整理することで、ビジネスモデル俯瞰図の内容がより深まり、説得力のある計画書になります。国がこれらのツールの活用を推奨しているのは、経営状況の透明性を高め、経営者自身が自社の強みを再認識することが、経営改善の成功には不可欠だと考えているからです。

4. ビジネスモデル俯瞰図をもとに具体的なアクションプランと資金繰り計画を策定し実行に移す

ビジネスモデル俯瞰図によって現状が整理されたら、次に行うべきは、具体的な「改善策」の策定です。資料には、計画策定支援において作成すべき書類として「アクションプラン(具体的な改善策)」「資金繰り計画」「損益計画」が挙げられています。

アクションプランは、俯瞰図で見つかった課題を解決するために「いつまでに、誰が、何をするのか」を明確にした行動計画です。例えば、特定の工種で収益性が低いことが判明した場合、外注費の見直しや工程管理の徹底といった具体的な対策をここに記載します。また、建設業で最も重要な「資金繰り管理」についても、今後の計画を数値で示さなければなりません。

これらの計画はすべて、最初に見える化したビジネスモデル俯瞰図と整合性が取れていなければなりません。図解された現状分析に基づいているからこそ、アクションプランは絵に描いた餅にならず、実現可能な改善策として機能します。専門家と一緒にこれらの詳細な計画を作り上げることで、経営者は自信を持って改善の一歩を踏み出すことができるようになります。

5. 作成した計画を金融機関に提出し対話を行うことで現在の経営状況と将来の展望を共有する

早期経営改善計画策定支援事業の必須条件の一つに、「策定した計画を金融機関(メインバンク等)に提出し、対話を行うこと」があります。これは、単に書類を銀行に届けるという事務的な作業ではありません。ビジネスモデル俯瞰図を用いて自社の事業構造を丁寧に説明し、どのように改善していくのかを銀行の担当者と共有する大切な機会です。

建設業のビジネスは外部から見ると複雑で、現場ごとの収支が見えにくいという側面があります。しかし、専門家と共に作成した客観的な資料を提示することで、銀行側は「この会社は自社の課題を正しく把握し、具体的な対策を講じている」と高く評価します。

現在の経営状況だけでなく、将来の展望を銀行と共有しておくことは、良好な関係を築くための鍵となります。銀行との対話を通じて、現在の経営課題に対する理解を得ることは、資金繰りの安定や将来的な融資相談をスムーズにするなど、経営にとって大きなプラスに働きます。自社の内情をオープンにし、共に改善を目指す姿勢を示すことが、銀行からの信頼を勝ち取る最短ルートなのです。

6. 計画策定後の3年間は専門家による伴走支援(モニタリング)を受けPDCAサイクルを定着させる

計画を立てて終わりにするのではなく、その後の実行をサポートしてくれるのが、本事業の「伴走支援(モニタリング)」です。計画策定後の3年間、定期的に専門家が訪問し、計画の進捗状況を確認するとともに、必要に応じたアドバイスを行います。資料では、このモニタリングを年2回以上実施することが必須とされています。

建設業の現場は日々状況が変化するため、当初の計画通りに進まないこともあります。伴走支援では、ビジネスモデル俯瞰図で描いた理想の姿と、アクションプランの実行結果、そして実際の資金繰りの動きを照らし合わせ、ズレが生じていれば早急に修正をかけます。

この「モニタリング」というプロセスを通じて、自社の中に「PDCAサイクル(計画・実行・確認・改善)」を回す習慣を身につけることができます。専門家が定期的にチェックに訪れることで、経営管理に対する意識が常に高く保たれ、自律的な経営管理体制が構築されていきます。これが、資料にある「自社で経営管理を行う習慣を身につける」という大きなメリットに繋がるのです。

7. 費用の2/3(最大80万円)が補助されるため低コストで専門家の高度なノウハウを活用できる

ビジネスモデル俯瞰図の作成や経営改善計画の策定、そしてその後の伴走支援には専門家への費用が発生しますが、本事業ではその2/3が補助金として支給されます。補助の上限額は最大80万円となっており、内訳は計画策定支援が上限50万円、伴走支援(モニタリング)が上限30万円です。

さらに、特定のニーズに応じてオプション加算も用意されています。例えば、事業承継を考えている場合には「企業概要書」の作成にプラス10万円、経営者保証の解除に向けた金融機関との交渉に弁護士等を活用する場合にはさらにプラス10万円が加算されます。

建設業の経営者が独力でこれほど詳細な現状分析や計画策定、銀行交渉を行うのは容易ではありませんが、この制度を利用すれば、自己負担を最小限に抑えつつ、中小企業診断士などの高度な専門知識を持ったプロフェッショナルの力を借りることができます。低コストで自社の経営基盤を強化できるこの制度は、経営に課題を感じ始めている事業者にとって、非常に利用価値の高いものと言えます。

8. 内部管理体制の構築と経営の透明性向上によりガバナンスを整備し企業の価値を高める

ビジネスモデル俯瞰図を作成し、それを公開して銀行や専門家と対話することは、企業の「ガバナンス(内部管理体制)」を整備することに他なりません。資料では、計画策定の着眼点として「ガバナンスの整備」「内部管理体制の構築」「経営の透明性向上」が挙げられています。

建設業において経営の透明性を高めることは、取引先や金融機関からの社会的信用を高めることに直結します。誰がどのような意思決定を行い、どのようにお金が動いているのかが明確であれば、外部からの信頼は自ずと高まります。

また、経営者保証の解除を目指す場合にも、こうしたガバナンスの整備は不可欠な要素となります。本事業を通じて、専門家の目を入れた管理体制を整えることは、単なる数字上の改善を超えて、企業としての「質」を向上させる取り組みです。透明性の高い経営は、結果として本源的な収益力の向上を支え、持続可能な企業成長を実現するための強力な武器となるのです。

9. 計画策定や伴走支援を第三者に丸投げすることは固く禁止されており経営者の主体性が求められる

この支援事業を利用するにあたって、絶対に守らなければならない厳格なルールがあります。それは、計画策定や伴走支援を、申請した認定支援機関以外の第三者に「丸投げ」することは認められないという点です。また、経営者が一切関与せずに専門家任せで書類を作ることも許されません。

本事業の目的は、あくまで事業者が自ら経営改善に取り組む意欲を持ち、その習慣を身につけることにあります。ビジネスモデル俯瞰図は経営者自身の頭の中にある事業のあり方を可視化するものであり、アクションプランを実行するのも経営者自身です。

もし、伴走支援が行われなかったり、協議会への報告が適切になされなかったりした場合には、補助金の返還を求められることもあります。この厳しいルールは、経営者が主体となって真剣に経営改善に取り組むことを求めている証拠でもあります。専門家はあくまで「支援者」であり、主役は経営者自身であることを忘れてはなりません。

10. まとめ:ビジネスモデル俯瞰図の作成は建設業の明るい未来を切り拓くための第一歩である

建設業を取り巻く環境は常に厳しく、経営者には迅速かつ的確な判断が求められます。しかし、現状が正しく把握できていなければ、正しい判断を下すことはできません。「早期経営改善計画策定支援事業(バリューアップ支援事業)」を活用し、ビジネスモデル俯瞰図を作成することは、自社の現状を曇りのない目で見つめ直し、強みを再発見するための絶好の機会です。

中小企業診断士などの専門家と共に歩む3年間は、単に補助金を受け取る期間ではなく、自社の収益力を根本から鍛え直し、銀行との信頼関係を盤石なものにするための貴重な時間となります。作成した計画を実行し、定期的なモニタリングを通じて改善を重ねることで、自社に強固な経営管理体制が定着します。

「経営に少し不安を感じ始めた」という今こそが、動くべきタイミングです。国が提供するこの支援制度を賢く活用し、ビジネスモデル俯瞰図という羅針盤を手にすることで、次なる成長への道筋を明確に描き出しましょう。一歩踏み出す勇気が、建設業としての誇りと安定した未来を確実に引き寄せます。

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この記事を書いた人

佐藤勇樹のアバター 佐藤勇樹 中小企業診断士

偏差値30以下の最底辺都立高校に通っていたが勉強を始めてから約半年で、まさかの中小企業診断士の1次試験に「一発合格」学内最年少、出身大学初の「中小企業診断士」の資格を取得。
大学卒業後、中小企業診断士の資格が功を奏し、大手上場企業の大塚商会に就職。その企業を3年務めたあと、コンサルタントとして夢の独立を果たすも、稼げずに挫折する。
そんな時に「補助金コンサルタント」に出会い、ノウハウを徹底研究、知識ゼロからたった3 年で採択額9 億円、年商7,000 万円になる。
そして、補助金コンサルタントのスキルを体系化した「補助金コンサルタント養成講座」を構築。
その講座を、メンバーに受講してもらったことで、誰でも補助金コンサルティングをできる様になり、年収1,000 万円を稼ぐメンバーが続出。
今では引き続き企業の補助金支援をしながら、「補助金コンサル養成トレーナー」として、稼げる士業の育成を行っている。

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